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建設業の海外展開戦略:アジア・中東市場のビジネスチャンスと課題

2025年7月7日
建設会社M&A

はじめに

人口減少や公共投資の頭打ちにより、国内建設市場は縮小傾向にあります。こうした中、注目を集めているのが「海外市場への進出」です。特にアジアや中東は、インフラ整備や都市開発が急速に進む“成長エリア”として、建設業にとって大きなビジネスチャンスが広がっています。本記事では、建設業の海外展開を検討する企業に向けて、アジア・中東市場の特徴、現地ニーズ、進出時の課題、成功事例などを交えて解説します。

1. なぜ今、建設業に海外展開が必要なのか?

日本国内では少子高齢化が進み、建設投資も年々減少傾向にあります。民間の住宅建設や公共工事はピーク時の水準を大きく下回っており、特に中長期的な成長を見込むのは難しくなっています。その一方で、海外、特にアジア・中東では、

  • ・インフラ整備(道路・鉄道・港湾)


  • ・スマートシティ建設


  • ・大規模再開発プロジェクト


  • ・エネルギー関連施設(太陽光・風力・石油・ガス)


といった建設需要が急増しています。特に日本の建設業は「品質・安全・納期の厳守」が評価されており、海外でも高い信頼を得られる可能性が十分にあります。

2. アジア・中東市場のビジネスチャンス

■ アジア市場:経済成長と都市化の加速

東南アジア諸国(ASEAN)を中心に、都市化・工業化が進んでおり、次のような分野でニーズがあります。

  • ベトナム・インドネシア・フィリピン
     → 道路、鉄道、橋梁、空港などの大型インフラ需要
     → 日本のODA(政府開発援助)案件に絡むチャンスも

  • インド・バングラデシュ
     → 工業団地・物流施設建設、スマートシティ構想が活発
     → 合弁事業や技術提供の需要あり

■ 中東市場:脱石油依存とメガプロジェクト

UAEやサウジアラビアでは「脱石油依存」に向けた国家戦略が進行中。以下のようなプロジェクトに建設需要が集中しています。

  • サウジアラビア「NEOM(ネオム)」計画
     → 約5,000億ドル規模の巨大都市建設プロジェクト
     → 環境配慮型・スマートシティ型都市の構築ニーズあり

  • UAE・カタール・クウェート
     → スタジアム、商業施設、観光地インフラなど多様な案件

日本企業は、「高品質・高技術・納期遵守」という強みを活かして、地場企業との差別化が可能です。

3. 海外進出の課題とリスク

チャンスが多い一方で、海外展開には固有のリスクと課題が存在します。

① 法規制・許認可の違い

現地の建設法規、労働法、会計制度などが日本と大きく異なります。事前に現地専門家やコンサルタントと連携することが重要です。

② 現地パートナーの選定

多くの国で、現地企業との合弁やJV(ジョイントベンチャー)形式が求められます。信頼性・実績を確認した上で提携先を選ぶ必要があります。

③ 言語・文化の壁

現場での意思疎通に支障が出ると、品質・安全に直結します。現地マネジメント体制の整備、通訳や現地語対応人材の確保が不可欠です。

④ 資金繰り・為替リスク

契約通貨の変動や、未収金・支払い遅延による資金繰りの悪化に注意が必要です。信用調査や保険(貿易保険等)の活用も視野に入れましょう。

4. 成功事例に学ぶ:海外展開の実践

● 清水建設(インドネシア)

ジャカルタにおける大型ビル建設を中心に、地場ゼネコンとの合弁会社を設立。日本品質の施工技術と現地の人材・コストを融合し、競争力を確保。

● 大成建設(UAE)

ドバイ・アブダビでの空港・インフラ関連事業に参画。高品質・安全基準を武器に、繰り返し受注を獲得。

● 中堅ゼネコンの事例(ベトナム)

現地デベロッパーと提携し、工業団地内の建設・メンテナンスを一括受注。中小規模でも現地密着型で競争力を発揮。

5. 海外展開を成功させるための5つのステップ

ステップ内容
① 調査現地の市場環境、競合、規制などを徹底リサーチ
② パートナー選定信頼できる現地企業・コンサルタントを選ぶ
③ 体制構築管理・安全・品質の社内基準を現地に適用する体制を整備
④ リスク管理保険・契約条項・法務対策を徹底
⑤ 実績の積み上げ小規模案件から始め、信頼とブランドを構築する

まとめ:成長市場でのチャンスを確実に掴むために

海外展開は確かにリスクを伴いますが、それ以上に“成長市場での利益機会”と“新たな技術活用のフィールド”が広がっています。特にアジア・中東のインフラ需要は今後10〜20年続くと予測されており、早期に足場を築く事が長期的な企業成長に直結します。重要なのは、「小さく始めて、着実に育てる」姿勢です。堅実に実績を重ね、信頼を獲得しながら、世界を舞台にした建設ビジネスを展開していきましょう。

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