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建設業で利益を最大化する原価管理のコツ

2025年5月26日
建設会社M&A

はじめに

~原価の見える化とコストダウン実践法~
 建設業では、広告やネット集客よりも「紹介」や「口コミ」から仕事が来る割合が高いのが現実です。特に地域密着型の工務店や職人業では、「あの会社なら安心」「あの人に頼みたい」という信頼に基づく紹介が最強の営業手段と言えます。

 しかし、紹介は“自然に生まれるもの”ではありません。意図的に生まれる仕組みと、日々の信頼構築の積み重ねが必要です。この記事では、口コミ・紹介営業を強化するための実践的な方法をご紹介します。



原価管理とは? なぜ建設業で特に重要なのか

 原価管理とは、工事や案件ごとの費用構造(人件費・材料費・外注費など)を把握し、利益率を適正に維持するための管理手法です。


建設業で原価管理が重要な理由

  • ・案件ごとに利益が変動しやすく「儲かっているつもりで赤字」になるリスクが高い
  • ・多くのコストが事前見積ではなく、現場進行中に確定する
  • ・複数現場が並行するため、部門別・現場別の収支管理が困難

原価の「見える化」が最優先

利益を出すための第一歩は、数字で現場を管理する体制づくりです。


見える化の基本ステップ


1.工事ごとの原価集計表を作成
(Excelまたはクラウド会計でも可)


 工事別原価集計表(見本)

工事件名工事番号着工日完了日原価区分金額
(千円)
備考
○○ビル改修工事A-2024-012024/10/012024/12/15材料費2,500配管・資材費用
外注費1,200電気工事協力業者
人件費1,000自社作業員給与
経費350仮設・搬入費
小計5,050
請負金額6,000見積契約額
粗利益950利益率:約15.8%


 
2.以下の5要素を項目別に記録・比較

原価項目内容例
人件費自社職人・現場監督・アルバイトの給与
材料費資材・部材・建材の購入費用
外注費協力会社への発注費・施工費
諸経費ガソリン代・駐車場・搬入出費用など
管理費事務所経費の一部・通信費・間接経費など



3.見積金額と実績の差異を分析(予算 vs 実績)


差異分析表(予算 vs 実績)見本

工事件名工事番号項目予算額(千円)実績額(千円)差額
(千円)
差異率(%)備考
○○ビル改修工事A-2024-01材料費2,4002,500+100+4.2%鉄材単価上昇による増加
外注費1,1001,200+100+9.1%追加工事対応
人件費1,0501,000-50-4.8%工期短縮の影響
経費300350+50+16.7%搬入用重機レンタル追加
原価合計4,8505,050+200+4.1%
請負金額6,0006,000±00.0%
粗利益1,150950-200-17.4%利益圧縮(粗利益率15.8%)


解説ポイント

  • 差額と差異率を明記することで、異常値や改善対象がすぐ分かる
  • ・差異の要因を備考欄に記録することで、PDCAを回す材料に
  • ・同様の表を複数案件で並べると「どこで予算管理が甘いか」が見える化される

コストダウンを実現する実践法

 原価が見えるようになったら、次は実際の削減に取り組みましょう。
以下は、現場でできる即効性のあるコストダウン策です。


1. 外注費の適正化

  • ・同じ作業でも単価の違う業者を比較検討
  • ・継続発注でボリュームディスカウント交渉
  • ・業務範囲を明確化して二重発注の防止


2. 材料費の見直し

  • まとめ買いによる割引を活用(協力業者との共同購入も効果的)
  • ・価格が不安定な資材(鉄・木材など)は見積時点で価格変動リスクを明記


3. 作業工程の短縮・重複防止

  • 段取り八分:作業前の準備・手配を徹底し、手待ち時間を削減
  • ・現場でのダブルチェック(余分な手直しを防ぐ)
  • ・複数現場で人材や資材の共有・移動を効率化


4. 支払いサイト・キャッシュフローの最適化

  • ・外注費・材料費の支払いタイミングを調整し、資金繰りを安定
  • ・前金・中間金の交渉を入れることで資金繰りリスクを減らす

原価管理ができるとどう変わるか?

Before(見えない経営)After(見える経営)
案件ごとの利益が把握できないどの現場が黒字か一目でわかる
無駄な発注や在庫が発生必要分だけ調達しコスト削減
感覚的な価格交渉実績を元にした根拠ある価格提示が可能
キャッシュが苦しい支払い・回収タイミングが安定し、資金繰り改善

成功事例:中小建設会社の原価管理改善

会社概要

  • 所在地:埼玉県
  • 業種:住宅リフォーム・戸建て内装工事
  • 従業員数:15名(自社職人+管理部門)
  • 年商:約2億円


取り組み前の課題

  • ・現場ごとの実際の利益が分からず、黒字か赤字か不明
  • ・外注費や材料費の請求が後出しで届き、予算を超過することが多発
  • ・見積もりと実際のコストの差が大きく、粗利益率が25%未満で推移


取り組み内容

原価の見える化を徹底

  • Excelベースで現場ごとの原価表(5項目)を作成
原価項目入力対象
人件費日報をもとに職人単価×稼働日で算出
材料費納品書と現場名を紐づけて記録
外注費見積と実績を都度比較して入力
諸経費駐車場代・搬入費・仮設トイレ等
管理費現場監督の工数を按分して記録


毎週1回、原価と進捗の「社内ミーティング」を実施

  • ・各現場の予算超過リスクを早期に把握し対応策を検討
  • ・管理職・職長が**「数字」を意識し始めた**


成果

項目ビフォーアフター(6か月後)
粗利益率約25%35%超に改善
外注費の超過月2〜3件月0〜1件に減少
現場ごとの黒字化率約60%90%以上が黒字化
管理工数日報処理・資料作成が煩雑情報が集約され作業時間を削減


成功のポイント

  • 数字で現場を語る文化を社内に定着させた
  • ・手書きからデジタル化(Excel→クラウドへの移行も検討中)
  • ・管理者だけでなく職人もコスト意識を持ち始めた

まとめ

数字で現場を見て、利益を残す会社へ
 建設業における利益確保のカギは、「現場を数字で管理できるかどうか」に尽きます。

 原価を見える化し、小さなコストでも積み重ねて改善することで、“儲かる現場体質”へと転換することが可能です。

 まずは1現場からでも構いません。原価表の作成、材料・外注費の見直し、報告体制の整備など、できるところから実行することが継続的な利益改善につながります

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