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建設業におけるドローン活用最前線:測量・点検・進捗管理の革新

2025年7月15日
建設会社M&A

はじめに

かつて「空撮」のための特殊機器だったドローン(無人航空機)は、今や建設業界において現場の課題を解決する“スマートツール”として急速に普及しています。特に、測量・点検・進捗管理といった分野での活用が進み、作業の効率化や安全性の向上、さらにはコスト削減にもつながっています。本記事では、建設業におけるドローンの具体的な活用方法とそのメリット、導入時の注意点について解説します。

なぜ今、建設業にドローンなのか?

建設現場は常に「人手不足」「作業の安全確保」「作業効率の改善」といった課題と隣り合わせです。その中で、空から広範囲を効率的に把握できるドローンは、これまで時間と人力を要していた業務を大きく変える存在として注目されています。特に国土交通省もBIM/CIM推進やi-Constructionの中で、ドローンを含むICT技術の導入を積極的に後押ししています。

活用①|高精度なドローン測量で省力化と効率化

従来の測量は、測量士が現場を歩いてポイントを取得し、数日を要する作業でした。しかし、ドローン測量では空中からの写真撮影と3D解析により、短時間で広範囲の地形データを取得できます。

主なメリット

・作業時間を最大1/10まで短縮

・高所・傾斜地・足場の悪い現場でも安全に対応

・3次元点群データを活用しBIM/CIMとの連携も可能

近年では精度数センチ程度のRTK(リアルタイムキネマティック)測量機能付きドローンの登場で、より正確な測量が可能となっています。

活用②|インフラ点検や構造物検査で安全性向上

高所作業や狭小空間での点検は、落下・崩落のリスクを伴います。ドローンはそのリスクを軽減しつつ、人の目に代わって精密な点検作業を実現します。

活用例

・橋梁やトンネルのひび割れ確認

・外壁の損傷や腐食箇所の確認

・太陽光パネル・送電設備などの保守点検

最近では赤外線カメラやズームカメラを搭載し、目視困難な劣化箇所の検出にも対応。AI解析と組み合わせた「自動診断」技術も進化しています。

活用③|進捗管理・施工記録の“見える化”

現場の進行状況を上空から定期的に撮影することで、施工の可視化・関係者間の情報共有がスムーズになります。

主な効果

・定点撮影による進捗の「見える化」

・発注者や協力会社とのデータ共有が容易

・トラブルや手戻りの防止に貢献

また、建設DXと組み合わせてクラウド管理システムに連携することで、遠隔地からでもリアルタイムに状況を確認できます。

ドローン導入のポイントと注意点

導入には多くのメリットがある一方、以下のような注意点もあります。

①航空法など法令遵守が必須

ドローンの飛行には国土交通省への申請や、特定エリアでの飛行許可が必要です。無許可での飛行は罰則対象となります。

②操縦者のスキルと資格

業務用ドローンは国家資格(無人航空機操縦者技能証明)が必要になるケースも。社内での操縦者育成か、外部委託の検討が必要です。

③導入コストと保守体制

機体費用やソフトウェア、保険、メンテナンスなどのコストも考慮しましょう。まずはスモールスタート(小規模な実証実験)からの導入がおすすめです。

未来像|AI・自動飛行・ロボティクスとの融合へ

① 自動飛行による巡回点検|人の手を介さず定期点検を実施

現状:
ドローンは操縦者の操作または自動航行プログラムに基づいて飛行していますが、事前準備や操作が必要です。

今後:

・ドローンに定期点検ルートを登録し、完全自動で離陸 → 点検 → 着陸。

・気象センサーやGPS、3Dマップ連携により障害物や天候に応じた飛行ルートを自律判断。

・複数地点の点検をスケジューリングして自動巡回。

・工場や建設現場、ダム・橋梁などのインフラ点検に導入が進行中。

🔍 具体事例:

  • 鹿島建設が開発した「K-DAP(Kashima Drone Automated Patrol)」は、建設現場を定期的に自動飛行で巡回・撮影し、進捗管理や異常検知に活用。

② AI解析による自動異常検出|目視から“自動判定”へ
現状:
ドローンが撮影した映像や画像を人間が確認し、異常箇所(ひび割れ、腐食、欠損など)を判断しています。

今後:

・撮影データを即時クラウドにアップロード。

・AIが画像解析を行い、クラックや損傷箇所を自動検出。

・過去データと比較して変化・劣化の進行を判定。

・異常の重要度に応じたレポート自動生成

🔍 具体事例:

・NTTドコモやソフトバンクは、AI画像解析とドローンを組み合わせた鉄塔点検サービスを展開。

・国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」にも、AIを活用した点検技術が複数登録されています。

③ 他のロボット・機械との連携作業|現場の“スマート協働”

現状:
ドローンは単独での作業が中心です。

今後:

・建設機械(バックホウ・クレーン等)と連携し、作業範囲や状況をリアルタイムで共有。

・ドローンが測量・撮影 → データを自動でBIM/CIMと連携 → 建機がそのデータを基に施工を実行。

・地上ロボット(UGV)と連携し、ドローンが上空から監視しながら、地上作業をサポート。

・完全自律型の「現場の見守り・指示係としてのドローン」というポジションが登場。

🔍 具体事例:

・大成建設が開発中の「T-iROBO」シリーズでは、ドローンと建機が同じクラウドでデータを共有し、自律施工をサポート。

・清水建設は、ドローン×地上走行ロボットによる巡回点検システムの実証を実施。

将来的な展望|“空の現場監督”としてのドローン

人間は“操作”ではなく“判断結果の確認と最終決定”に関与するだけ、という働き方の変革へ。ドローンはカメラとしてだけでなく、センサー・AI・通信モジュールを搭載した知能機械へと進化。「このエリアで作業が遅れている」「資材の配置が間違っている」といった状況判断をAIが行い、人間にアラートを出す or 自律対応する。

まとめ|ドローンは“建設現場の新しい相棒”になる

ドローンはもはや「特別な技術」ではなく、建設業の生産性を高めるための“当たり前の選択肢”となりつつあります。測量・点検・進捗管理といった現場の重要業務を、より安全に・効率的に・正確にこなせるドローンは、業界の未来を担う存在です。導入には準備と学習が必要ですが、早期に取り組むことで、他社に先んじた「現場改革」が実現できます。

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