はじめに
建設業界は慢性的な人手不足に直面しており、若手の日本人職人が減る中で、外国人材の活用が現場の即戦力として注目されています。技能実習や特定技能制度を通じて、全国で多くの外国人が建設現場で働いていますが、導入には制度理解・言語・定着支援など多くの課題も伴います。
本記事では、建設業における外国人材の受け入れ制度の概要、導入のメリットと課題、そして今後の対応策を解説します。
目次
主な受け入れ制度の比較
1.
制度名 | 技能実習制度 |
主な特徴 | 技能移転が目的 |
在留期間 | 最長5年 |
対象職種 | 型枠施工、鉄筋施工など |
ポイント | 実質的に労働力として利用されている点に批判もあり |
2.
制度名 | 特定技能1号 |
主な特徴 | 労働力確保が目的 |
在留期間 | 最長5年 |
対象職種 | 建設分野14職種 |
ポイント | 実習と異なり転職も可能、試験合格が条件 |
3.
制度名 | 技能実習からの移行 |
主な特徴 | 技能実習修了者が特定技能に移行 |
在留期間 | 合計10年勤務可能 |
対象職種 | 同一分野に限定 |
ポイント | 人材定着の仕組みとして有望だが、実質的に労働力として利用されている点に批判も |
外国人材活用による「企業の国際化」メリット一覧
項目 | 内容 |
---|---|
組織の多様化 | 異文化コミュニケーションにより柔軟なチーム作り |
社内意識の変化 | 若手が教える立場になり、教育力・協働意識が向上 |
採用力の強化 | 「多様性のある会社」として魅力的に映る |
海外展開の布石 | 将来的な国際案件・現地法人設立の足がかりに |
ESG・SDGs対応 | 「多様性尊重」「包摂的雇用」が評価されやすい |
事例:東京都内の中堅建設会社(社員数約80名)
『背景と課題』
『取り組み内容』
外国人技能実習生の受け入れ(ベトナム・インドネシア出身)
現地出身の人材を「海外展開要員」として育成
結果と効果
項目 | 成果 |
---|---|
技能継承 | ベテランの技術を体系化し、教育の質が向上 |
社内の国際対応 | 多言語環境に対応し、海外案件への準備が加速 |
組織文化 | 若手社員の「教える意識」が芽生え、職場の一体感が向上 |
外国人社員の定着 | 特定技能移行により、5年以上働き続ける人材も輩出 |
海外展開の準備 | 現地出身人材の活躍で、現地調整・信頼構築がスムーズに進行中 |
担当者の声(抜粋)
「最初は“日本語が通じないから大変だろう”という不安もありましたが、
実際には彼らの勤勉さと吸収力が、社内にも良い刺激になりました。
今では、彼らがいないと困るという声が現場から出てくるほどです。」
実際に効果を発揮している現場例
現場 | 外国人活用前 | 外国人活用後 |
---|---|---|
地方の住宅基礎工事会社 | 応募ゼロ/職人高齢化 | ベトナム人実習生4名で作業安定化 |
都市部の内装業者 | 忙しいときに人手が足りず断工 | 特定技能2名で繁忙期の納期厳守を実現 |
鉄筋組立業者 | 退職者多数で現場稼働率低下 | 若手外国人で週5現場稼働を維持 |
外国人材に業務を教える際には、言葉の壁や文化の違いがあるため、「見て覚える」「感覚で伝える」といった従来のスタイルでは不十分です。
そのため、企業側が以下のような工夫を行うことになります:
✅ 教え方を「見える化」「言語化」せざるを得ない
・作業手順を図や動画で示す
・手順書や作業マニュアルを多言語対応で整備
・動作の「なぜそうするのか」まで説明文を加える
✅ 作業の手順が整理され、誰でも再現可能に
・不適切な扱いがあると、監督官庁からの指導対象になるリスク
・雇用形態、労働時間、転職制限などの制度を誤解している企業も
・日本語学習支援
・住居・銀行口座・医療のサポート
・食事や宗教への配慮
・通訳者の配置やピクトグラムの活用
・外国人リーダーの登用による橋渡し役
・技能や努力を正当に評価する仕組み
「●●建設(仮名)」では、技能実習制度を活用し10名以上の外国人を受け入れ。
建設技能を取得した後、特定技能へ移行させ長期的な人材戦力として育成している。
日本人と混成のチームを組ませ、ベテラン職人が教育係となることで、現場定着率も向上。
外国人材は“受け入れ”から“共に働く”へ
建設業における外国人材の活用は、もはや一時的な穴埋めではなく、企業の持続可能性を支える重要な柱となっています。
制度の正確な理解と、文化・生活の違いを尊重する職場づくりが、外国人材との信頼関係構築の鍵になります。
今後は「外国人労働者を雇う」ではなく、「共にチームとして働く」という視点が、建設業に求められる姿勢と言えるでしょう。