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建設業における外国人材の活用と課題

2025年5月20日
未分類

はじめに

建設業界は慢性的な人手不足に直面しており、若手の日本人職人が減る中で、外国人材の活用が現場の即戦力として注目されています。技能実習や特定技能制度を通じて、全国で多くの外国人が建設現場で働いていますが、導入には制度理解・言語・定着支援など多くの課題も伴います。

本記事では、建設業における外国人材の受け入れ制度の概要、導入のメリットと課題、そして今後の対応策を解説します。

建設業における外国人材の受け入れ制度

主な受け入れ制度の比較

1.

制度名技能実習制度
主な特徴技能移転が目的
在留期間最長5年
対象職種型枠施工、鉄筋施工など
ポイント実質的に労働力として利用されている点に批判もあり


2.

制度名特定技能1号
主な特徴労働力確保が目的
在留期間最長5年
対象職種建設分野14職種
ポイント実習と異なり転職も可能、試験合格が条件


3.

制度名技能実習からの移行
主な特徴技能実習修了者が特定技能に移行
在留期間合計10年勤務可能
対象職種同一分野に限定
ポイント人材定着の仕組みとして有望だが、実質的に労働力として利用されている点に批判も

外国人材を活用するメリット

企業の国際化

外国人材活用による「企業の国際化」メリット一覧

項目内容
組織の多様化異文化コミュニケーションにより柔軟なチーム作り
社内意識の変化若手が教える立場になり、教育力・協働意識が向上
採用力の強化「多様性のある会社」として魅力的に映る
海外展開の布石将来的な国際案件・現地法人設立の足がかりに
ESG・SDGs対応「多様性尊重」「包摂的雇用」が評価されやすい



事例:東京都内の中堅建設会社(社員数約80名)


背景と課題』

  • ・高度経済成長期から続く老舗の建設会社で、社員の平均年齢が50代以上
  • ・若手採用が進まず、現場の技能継承に課題を抱えていた
  • ・海外案件(アジア圏での工場建設)への対応力を高める必要もあった


取り組み内容』
外国人技能実習生の受け入れ(ベトナム・インドネシア出身)

  • ・主に型枠・左官などの専門技術職種で採用
  • ・日本語教育を社内でサポートし、社内報や掲示物も多言語化
  • ・技能実習3年終了後、一部を特定技能へ移行して継続雇用

現地出身の人材を「海外展開要員」として育

  • ・ベトナム出身の1名を社内の翻訳・通訳・渉外担当として登用
  • ・現地企業や海外発注者との文化的な橋渡し役として活躍
  • ・2024年からベトナムでの現地法人設立を見据えた現地調査プロジェクトに参加


結果と効果

項目成果
技能継承ベテランの技術を体系化し、教育の質が向上
社内の国際対応多言語環境に対応し、海外案件への準備が加速
組織文化若手社員の「教える意識」が芽生え、職場の一体感が向上
外国人社員の定着特定技能移行により、5年以上働き続ける人材も輩出
海外展開の準備現地出身人材の活躍で、現地調整・信頼構築がスムーズに進行中


担当者の声(抜粋)

「最初は“日本語が通じないから大変だろう”という不安もありましたが、
実際には彼らの勤勉さと吸収力が、社内にも良い刺激になりました。
今では、彼らがいないと困るという声が現場から出てくるほどです。」

人手不足の緩和

実際に効果を発揮している現場例

現場外国人活用前外国人活用後
地方の住宅基礎工事会社応募ゼロ/職人高齢化ベトナム人実習生4名で作業安定化
都市部の内装業者忙しいときに人手が足りず断工特定技能2名で繁忙期の納期厳守を実現
鉄筋組立業者退職者多数で現場稼働率低下若手外国人で週5現場稼働を維持

作業の標準化・マニュアル化が進む

外国人材に業務を教える際には、言葉の壁や文化の違いがあるため、「見て覚える」「感覚で伝える」といった従来のスタイルでは不十分です。
そのため、企業側が以下のような工夫を行うことになります:


✅ 教え方を「見える化」「言語化」せざるを得ない

・作業手順を図や動画で示す

・手順書や作業マニュアルを多言語対応で整備

・動作の「なぜそうするのか」まで説明文を加える


✅ 作業の手順が整理され、誰でも再現可能に

  • ・新人教育の時間短縮や質の均一化にも貢献
  • ・同じ品質の作業を複数人で安定的に実施可能
  • ・ベテランの「暗黙知」が形式知化される
  • 新人教育の時間短縮や質の均一化にも貢献


導入現場で直面する主な課題

言語の壁

  • ・指示が伝わりにくく、安全・品質に支障が出ることも
  • ・翻訳アプリやピクトグラムの活用が進んでいるが、意思疎通の限界

定着率の低さ

  • ・実習期間が終了すると帰国する人が多く、戦力が蓄積しにくい
  • 生活支援や職場の人間関係が不十分だと、早期離職のリスクが高まる

雇用主側の制度理解不足

・不適切な扱いがあると、監督官庁からの指導対象になるリスク

・雇用形態、労働時間、転職制限などの制度を誤解している企業も


外国人材の定着を促す工夫

生活面でのサポート

・日本語学習支援

・住居・銀行口座・医療のサポート

・食事や宗教への配慮

職場内の環境整備

・通訳者の配置やピクトグラムの活用

・外国人リーダーの登用による橋渡し役

・技能や努力を正当に評価する仕組み

実際の活用事例(簡易紹介)

「●●建設(仮名)」では、技能実習制度を活用し10名以上の外国人を受け入れ
建設技能を取得した後、特定技能へ移行させ長期的な人材戦力として育成している。
日本人と混成のチームを組ませ、ベテラン職人が教育係となることで、現場定着率も向上。

まとめ

外国人材は“受け入れ”から“共に働く”へ

建設業における外国人材の活用は、もはや一時的な穴埋めではなく、企業の持続可能性を支える重要な柱となっています。
制度の正確な理解と、文化・生活の違いを尊重する職場づくりが、外国人材との信頼関係構築の鍵になります。

今後は「外国人労働者を雇う」ではなく、「共にチームとして働く」という視点が、建設業に求められる姿勢と言えるでしょう。