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建設業の入札制度を攻略する:公共工事を獲得するための実践ノウハウ

2025年7月7日
建設会社M&A

はじめに

 建設業界において、安定した収益源として魅力的なのが「公共工事」です。しかし、公共工事を受注するには、自治体や官公庁が実施する入札制度を正しく理解し、的確に対応する必要があります。特に中小建設業者にとっては、入札の仕組みを知らずにチャンスを逃しているケースも少なくありません。本記事では、公共工事を獲得するための入札制度の基礎知識から、競争で勝つための評価点アップ術、実績管理の方法まで、実践的なノウハウを解説します。

1. 公共工事の入札制度とは?

 公共工事は、地方自治体や国の予算によって発注される工事で、主に以下のような方式で業者が選定されます。

【主な入札方式】

入札方式概要
一般競争入札公平な競争を促す制度で、参加条件を満たしていれば誰でも入札可能。
指名競争入札発注者があらかじめ選定した業者のみが参加可能。中小企業にチャンスがある。
随意契約特別な事情がある場合に限り、特定の業者と契約。例外的手段。
総合評価方式価格だけでなく、技術力や実績、安全性などの評価点を加味して落札者を決定。

2. 評価点を高めるには?入札で勝つためのポイント

 公共工事を受注するには、単に「価格を下げる」だけでは不十分です。特に総合評価方式では、「評価点」を高めることが受注の鍵を握ります。

① 技術者・資格の充実

  • ・1級・2級施工管理技士をはじめとする資格保持者がいるかどうかは、評価点に直結します。
  • ・経験豊富な主任技術者を確保し、常に配置できる体制を整えましょう。

② 工事成績評定を向上させる

  • ・完了した公共工事には、品質・安全・工程管理などの評価がつきます。
  • ・評価点が高いと、将来の入札で有利になります。
  • ・施工中の安全管理や報告書の正確性・提出スピード等、基本的な点が評価に大きく影響します。

③ 継続的な実績の蓄積

  • ・過去の受注履歴(履行実績)は、評価の重要な要素です。
  • ・小規模な工事でも積極的に受注し、完工を重ねて信頼を築きましょう。

④ ISO認証やBCP(事業継続計画)取得

  • ・ISO9001(品質)、14001(環境)、45001(安全衛生)などの認証は加点対象になる事があります。
  • ・地方自治体によっては、BCP策定企業に優遇措置を設けている場合もあります。

3. 実績管理の重要性とその方法

 評価点を高めるには、日頃からの実績管理が欠かせません。以下の点を習慣化しましょう。

■ 工事カルテの作成

  • ・各工事の概要・完工日・工事成績・配置技術者などをまとめた管理表を社内で共有。

■ デジタルツールの活用

  • ・Excelや建設業向けの実績管理ソフトを活用し、書類・履歴・評価を一元化。
  • ・書類作成の効率化にもつながり、入札書類の準備がスムーズに。

■ 定期的な評価点の見直し

  • ・自社が現在どのランクに位置づけられているか(経審の点数など)を常に把握し、次回の入札に備えて準備。

4. 地方自治体・官公庁の傾向を読む

 発注者によって評価項目や重視される点は異なります。たとえば…

  • A市:工事成績を重視

  • B市:BCP策定の有無が大きな加点要素

  • C庁:地域貢献活動や地元企業の雇用を評価


自治体や発注元の過去の入札公告・評価基準を読み解くことが、戦略的な入札参加に繋がります。

5. 中小建設業でも勝てる戦い方

 中小企業は大手に比べてリソースが限られる分、戦略的に動くことが重要です。

  • ・指名競争入札に的を絞る
     → 地元での評判や継続的な取引が評価されやすい。

  • ・小規模案件や緊急案件に積極参加
     → 応札者が少なく、競争が緩やか。実績づくりにも最適。

  • ・官公庁と定期的にコミュニケーションをとる
     → 発注者との信頼関係が、将来的な指名や相談につながるケースも。

まとめ:入札は「事前準備」で勝負が決まる

公共工事の入札で勝ち抜くには、日々の業務の中で「評価される体制」を築いておくことが必要不可欠です。単に安く請けるのではなく、技術・安全・信頼といった“見えにくい価値”を積み重ねることが、長期的な競争力につながります。入札制度を正しく理解し、評価点アップに向けた準備を一つずつ積み重ねていきましょう。それが、安定した受注と企業成長の鍵となります。

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