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建設業の最新トレンドと市場動向

2025年5月12日
建設会社M&A

はじめに

 近年、建設業界は急速な技術革新と環境規制の強化により、大きな変革期を迎えています。

デジタル技術の導入、エネルギー効率の向上、人材不足への対応など、多くの課題と向き合いながら、新たな成長の可能性を模索しています。特に、3Dプリンティング技術やAIの活用、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及は、施工の効率化とコスト削減を実現しつつあります。

ZEB(ゼロエネルギービル)やLCCM住宅といった省エネ建築の推進により、環境負荷の低減と持続可能な社会の実現が加速しています。さらに、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みとして、再生可能エネルギーの活用やカーボンクレジット制度の導入が進行中です。

本記事では、最新の建設技術や市場動向、省エネ建築、カーボンニュートラル、スマートシティ構想に焦点を当て、今後の業界の展望を詳しく解説します。これからの建設業界の動向を把握し、ビジネスやプロジェクトに活かすための参考にしてください。


新技術を用いたエネルギー・環境・人員のエコ化

 建設業界では、環境負荷の低減とエネルギーコストの削減が求められており、新技術や政策が進化しています。


建設業界におけるDX・省エネ建築・市場動向の要点整理

分野内容
DXの推進– 3Dプリンターによる建築資材の製作が進展
– BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及により、設計・施工・維持管理が効率化
図面アプリ・AI活用– 図面アプリやAIによる現場管理の強化
– 人型ロボットやAIエージェントが作業支援・効率化に貢献
– 高層木造建築などサステナブル建築の推進
市場動向(法規制)– 2025年以降、すべての新築建築物に省エネ基準適合が義務化
– 建築確認申請時に省エネ性能審査が必要
ZEB(ゼロエネルギービル)の普及– 国内ZEB市場は2030年度までに約12兆300億円規模に拡大予測
– 世界市場は2023年の284億ドルから、年平均11.1%で成長
税制優遇・補助制度– 省エネ建築に対する税制優遇・補助金制度が拡大を後押し
住宅設備・建材市場の拡大– 新築住宅向けに高性能建材・省エネ設備の需要が増加
– 省エネ計算業務は2025年以降、約5倍の拡大が見込まれる

省エネ建築

省エネ建築

 環境負荷の低減とエネルギーコスト削減を目的に、新技術や政策が進化しています。ZEB(ゼロエネルギービル)の推進では、日本政府が2030年までに新築公共建築物のZEB化を目指し、高効率空調(インバーター制御エアコン・ヒートポンプ)、AI・IoT制御による最適化、LED照明やBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)との連携が進められています。


スマートビルディング技術

 IoTを活用したエネルギー管理が可能となり、運用コストの最適化が期待されています。さらに、政府や自治体による補助金や税制優遇措置が拡充され、2025年の省エネ基準適合義務化に向けた支援が強化されています。

今後はZEB化やスマートビル、再生可能エネルギーの活用が一層加速すると考えられます。

カーボンニュートラル

 カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を削減し、吸収・除去することで実質ゼロにする取り組みです。建築業界はCO₂排出量が多く、その抑制に向けた技術と政策が進行しています。


建築業界のカーボンニュートラル化の動き

分野内容
ZEB(ゼロエネルギービル)の普及– 高断熱・高効率設備と再エネ活用により、エネルギー消費を実質ゼロ化
– 公共施設やオフィスビルで導入が拡大
木造・木質建築の拡大– 「ウッドチェンジ」政策により公共建築物等の木造化を推進
– 木材のCO₂吸収機能を活かしたサステナブル建築に注目
CLT(直交集成板)の活用– 耐震性・施工性に優れたCLTを活用した高層木造ビルの建設が進行
– 国産材の活用で地域経済にも貢献
再生可能エネルギーの活用– 太陽光・風力発電の導入が進み、省エネ型建築物が主流に
– VPPで電力を建物間で最適制御、V2HでEV電力を建物へ供給
LCCM住宅の推進– 建設・運用・解体・リサイクルすべての段階でCO₂排出を削減
– ZEHを超えるカーボンマイナス住宅として注目
省エネ建材・高効率設備– HEAT20 G2・G3レベルの高断熱建材が普及
– 高性能窓・LED照明、BEMSによるエネルギー管理が進行
政策と補助金制度– 2050年カーボンニュートラルに向けた法整備が進行中
– ZEB・LCCM住宅向けの補助金が拡充
カーボンオフセットとカーボンクレジット– CO₂排出の算定・削減・相殺(森林保全、再エネ投資)を通じたオフセット
– ESG投資の拡大によりJ-クレジット・CDM等の市場が拡大
– 環境配慮型建築への資金調達が容易に

 今後、ZEB化、再生可能エネルギーの活用、木造建築の普及、BEMSの最適化がさらに進み、政策と技術革新の両輪でより環境負荷の少ない建築が主流になるでしょう。

スマートシティ構想

 スマートシティ構想とは、AI、IoT、ビッグデータ、再生可能エネルギー、モビリティ技術などを活用し、都市機能を最適化し持続可能な社会を実現する計画です。日本では、環境負荷の抑制やエネルギー効率向上、都市インフラの最適化を目標に、次世代都市の開発が進められています。


スマートシティを支える技術

エネルギーマネジメント(カーボンニュートラル)再生可能エネルギー(太陽光・風力・水素)の活用
VPP(仮想発電所)・マイクログリッドによる電力の最適化
ZEB(ゼロエネルギービル)・ZEH(ゼロエネルギーハウス)の普及
スマートモビリティ(次世代交通システム)EV・FCV(燃料電池車)、自動運転技術の導入
MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)による公共交通の効率化
V2G(Vehicle to Grid)によるEVを蓄電池として活用
デジタルガバメント(行政サービスのデジタル化)AI・IoTを用いた行政手続きの効率化
スマートシティプラットフォームによる都市データの管理
電子決済・ブロックチェーンの導入による透明な行政運営


日本および海外のスマートシティ事例


日本】

 スーパーシティ構想(政府主導): AI・ビッグデータを活用した未来都市開発

 つくばスマートシティ(茨城県): 5G・IoTを活用したインフラ整備

 柏の葉スマートシティ(千葉県): エネルギー最適化・再生可能エネルギーの活用



【海外

 トロント(カナダ): IoTデータを活用した都市運営

 シンガポール(Smart Nation): AI・IoTによる都市政策・管理

 コペンハーゲン(デンマーク): カーボンニュートラルを目標としたエコシティ



スマートシティの主なメリット

項目内容
CO₂排出削減再生可能エネルギーの活用により、都市全体でカーボンニュートラルを実現。持続可能な環境づくりに貢献。
生活の利便性向上スマート交通システム、AIアシスタント、デジタル行政サービスの整備により、日常生活がより快適に。
災害対策の強化AIによる災害予測、ドローンやセンサーによる被害状況の即時把握など、迅速かつ高度な危機管理が可能に。
経済成長の加速スマートインフラやデジタル産業の育成により新たな雇用・事業機会を創出。DXによって都市全体の生産性も向上。



スマートシティの今後の課題と展望

課題内容
データプライバシーの保護AI・IoTの普及により個人データの活用が拡大。
個人情報保護の法整備運用の透明性確保が求められる。
インフラ整備とコスト5G、スマートグリッド、自動運転道路などのインフラ整備には巨額の投資が必要。
今後は官民連携(PPP)による資金調達がカギとなる。
デジタルデバイド(技術格差)高齢者やITリテラシーの低い層へのデジタル支援が不可欠。
スマートデバイスの簡略化デジタル教育の充実が重要。

 
 スマートシティは、AI・IoT・再生可能エネルギー・スマート交通を活用した未来都市構想であり、日本では「スーパーシティ構想」のもと、スマートモビリティやエネルギー管理の実証実験が進められています。海外では、シンガポールやコペンハーゲンが先行し、データ活用やカーボンニュートラル化を推進しています。

今後は、データプライバシーの確保、インフラ投資の拡大、デジタルデバイドの解決が課題となります。スマートシティ構想は、持続可能で利便性の高い都市を実現する重要な方針として、今後さらに発展していくでしょう。

まとめ

 建設業界は、デジタル化、省エネ技術、持続可能な都市開発を軸に、未来へと大きく進化しています。3DプリンターやAI、BIMの導入により、建設の生産性が向上し、環境負荷の軽減と人材不足の解決に貢献しています。

また、ZEBやLCCM住宅の普及、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みが加速し、建築業界全体が環境配慮型へとシフトしています。再生可能エネルギーの活用やカーボンクレジット市場の拡大は、今後の持続可能な建設の鍵となるでしょう。

さらに、スマートシティ構想の進展により、都市全体のエネルギー管理や交通インフラの最適化が進み、AIやIoTを駆使した未来都市の実現が目前に迫っています。政府の補助金制度や企業の積極的な投資が後押しする中、建設業界は新たなビジネスチャンスに溢れています。

今後、業界の最新動向をキャッチし、変化に対応することが重要です。技術革新と環境配慮の両立を図りながら、持続可能な未来の建設業を共に築いていきましょう。