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建設現場の省人化テクノロジー:ロボット・自動化の導入実例

2025年7月14日
建設会社M&A

はじめに

建設業界では、高齢化による熟練技能者の減少や、若年層の就業者不足が深刻化しています。国土交通省のデータによると、建設業就業者の約3割が60歳以上。2030年には技能労働者の約3割が不足すると予測されています。このままでは工期の遅延、施工品質の低下、安全リスクの増加など、現場に大きな影響が及ぶのは避けられません。そこで今、注目されているのが「省人化」のためのロボット技術や自動化システムの導入です。単なる“作業の置き換え”にとどまらず、施工現場の在り方そのものを変える可能性を秘めたスマート建設の最前線をご紹介します。

省人化のカギを握る3つのテクノロジー領域

①作業ロボットによる“施工の自動化”

②ICT建機による“重機のスマート化”

③AI・IoTによる“工程・管理業務の効率化”

    これらの技術は、現場の「人力でなければできない」とされていた作業を自動化・補助し、少人数でも高効率な施工体制を実現するものです。

    実例①:壁面塗装・内装仕上げロボット

    ▶ 概要:

    塗装やクロス貼りといった内装作業をロボットが自動で行う。建物の構造をスキャンし、正確な位置に均一に施工することが可能。

    ▶ 実際の導入事例:

    大手ゼネコンがマンションの内装現場に導入し、1名+ロボットで従来2~3名体制の作業が実現。塗りムラの少ない仕上がりとスピードアップを両立。

    実例②:鉄筋組立ロボット(自動配筋装置)

    ▶ 概要:

    鉄筋を自動で位置決めし、結束作業まで行うロボット。図面データを元に精密な作業が可能。

    ▶ 効果:

    ・作業時間を30〜50%短縮

    ・作業者の腰痛・事故リスクも軽減

    ・繁忙期にロボットが人員を補完する柔軟な対応が可能に

    実例③:自動運転・遠隔操作の建設重機

    ▶ 概要:

    ICT建機(油圧ショベルやブルドーザー)にGPSやセンサーを搭載し、自動運転や遠隔操作で掘削・整地作業を実施。

    ▶ 導入企業:

    鹿島建設・大林組・コマツなどが積極的に導入。1人のオペレーターが複数台の重機を操作する事例も増加中。

    ▶ メリット:

    ・技能者の“腕”に依存せず安定した施工品質を実現

    ・新人でも一定水準の作業が可能(教育コスト削減)

    実例④:現場巡回ロボット・AI監視システム

    ▶ 概要:

    自律走行型のロボットが現場を巡回し、温度・湿度・異常音・人の動きなどをセンサーで検知。
    AIが異常を分析し、現場監督にリアルタイム通知。

    ▶ 活用シーン:

    ・夜間の無人現場の見回り

    ・工事エリアへの不審者侵入対策

    ・熱中症リスクの早期発見

    実例⑤:ドローンによる測量・進捗管理

    ▶ 概要:

    空撮画像から3Dモデルを生成し、面積・体積・距離を正確に測定。進捗確認や出来高管理にも活用されている。

    ▶ メリット:

    ・作業時間を1/5以下に短縮

    ・足場や高所作業が不要になり、安全性が向上

    導入のポイントと課題

    ▶ 成功のポイント:

    ・作業内容と合致するテクノロジーの選定

    ・現場スタッフへの研修と運用マニュアルの整備

    ・段階的な導入と費用対効果の検証

    ▶ 課題:

    ・初期導入コストの高さ(機器1台で数百万円)

    ・全員が“テクノロジーを使いこなす”ための意識改革

    ・業務フローや管理体制の再設計が必要な場合も

    まとめ:スマート建設は「人にしかできない仕事」を守る

    省人化テクノロジーは、単に「人を減らす」のではなく、「人の力を最大限に活かす」ための手段です。繊細な仕上げ作業や、現場での判断力、顧客対応といった“人にしかできない仕事”に集中できる環境づくりこそが、真の目的です。人手不足がますます深刻化するこれからの時代、省人化=生き残りのための戦略と言えるでしょう。建設現場の未来を支えるのは、技術と人の最適な協働です。

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