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建設業における「繁忙期・閑散期」の波を乗り越える経営術

2025年7月14日
建設会社M&A

はじめに

建設業界では、季節や景気、官公庁の予算サイクルなどによって「受注の波」が激しくなるのが通例です。例えば、公共工事が集中する3~5月や9~11月に現場が重なり、繁忙を極める一方で、真夏や真冬には天候の影響や資材の調達遅延などで工事が停滞しがち。さらに、中小企業ほどこの波に翻弄されやすく、繁忙期の人手不足・閑散期の資金繰り悪化に悩む経営者も少なくありません。本記事では、こうした建設業特有の「繁閑差」を乗り越えるための実践的な経営術について、資金繰り・人員配置・受注管理の観点から解説します。

繁忙期・閑散期の特徴と要因とは?

建設業における「繁閑の波」の主な要因

時期要因
春(3~5月)公共工事の年度末・年度始めの駆け込み発注
夏(6~8月)高温・台風シーズンによる現場中断や工事遅延
秋(9~11月)民間工事が集中/住宅関連の駆け込み需要
冬(12~2月)降雪・気温低下による工事中断/民間需要の停滞

これらの影響により、「繁忙期は業務が回らない」「閑散期は固定費で赤字になる」といった課題が発生します。

閑散期に備えるキャッシュフロー管理

▶ ポイント①:繁忙期に余剰資金を“積み立て”ておく

・受注が多い月にこそ「運転資金」として資金を社内留保する

・工事進捗による“売上計上のタイミング”と“入金のタイムラグ”を把握し、資金ショートを回避

▶ ポイント②:ファクタリングや信用保証協会の活用

・早期資金化が必要な場合はファクタリング(売掛債権買取)も選択肢

・公共工事に強い信用保証制度や建設業向け融資をうまく活用

▶ ポイント③:閑散期に“固定費を下げる”工夫を

・外注費の見直し、レンタル機器の返却、車両の一時停止など

・役員報酬や広告費など、変動可能なコストの調整

人手不足とムダの両方を回避する

▶ 繁忙期に起きがちな人員課題:

・現場が足りず、外注に依存→コストが高騰

・経験不足の職人による施工トラブル

・残業や休日出勤で社員の疲弊

▶ 閑散期の課題:

・作業量がなく、職人のモチベーション低下

・雇用維持コストが重荷に

▶ 解決のカギ:「多能工化」と「雇用の柔軟性」

▽ 多能工化の推進

・内装・設備・外構など複数の職種に対応できる職人を育成
   → 繁忙期の人員調整が柔軟に、閑散期も稼働可能

▽ 雇用の見直し

・社員+登録制職人や業務委託のハイブリッド体制

・単発案件に対応できる「短期雇用制度」や「人材派遣」活用

案件の“年間平準化”を目指す戦略

▶ ポイント①:民間案件を増やし、時期依存を分散する

公共工事は予算年度に左右されやすいため、民間リフォームや店舗改修などの案件比率を高めることで安定性が向上します。

▶ ポイント②:“工期の分散提案”を行う

・顧客に対し「繁忙期よりも閑散期の工事」を提案

・閑散期に特別割引・早期着工特典などを設けてスケジュール調整を図る

▶ ポイント③:定期契約型ビジネスへのシフトも検討

・マンションの共用部メンテナンスや住宅の定期点検など、“定額×年間契約”のサブスクリプションモデルを導入する企業も増加中

デジタル活用で波を“見える化”・“ならす”

▶ ITツールで予実管理・工程計画を最適化

・工事管理ソフトで「年間の稼働計画」を立案し、繁閑を予測

・原価・稼働状況をリアルタイムで把握し、柔軟な調整が可能に

▶ データに基づく受注戦略の再構築

・過去の受注・売上データを元に、「どの時期にどの案件が多いか」を可視化

・営業活動のピークを調整し、案件の季節依存を減らす

まとめ:波を読む力が、強い経営をつくる

建設業における「繁忙期・閑散期」は避けられない現実です。しかし、それを“予測可能な経営リスク”ととらえ、資金・人材・案件の分散と最適化を実行できれば、むしろ強みになります。繁閑の波に流されるのではなく、波を読み、乗りこなすことが、持続可能で収益性の高い建設会社をつくる第一歩です。

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