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建設業における設備管理の基本

2025年5月12日
建設会社M&A

はじめに

~コスト削減と業務効率化を両立させるポイント~

 建設業では、重機の管理方法がコスト削減と業務効率に直結します。

第一章では「重機のリースと購入の選択基準」「メンテナンス体制の最適化」「中古重機の活用」は現場の経営改善に欠かせないテーマです。それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく整理し、建設業における最適な設備管理の考え方をご紹介します。

また、第二章では重機購入に係る節税・会計処理ガイドを掲載いたしました。

建設業における重機管理の基本|リース・購入・メンテナンスの最適解とは?

 建設業では、重機の選定や管理方法がコスト削減と業務効率化に直結します。本記事では、リースと購入の判断基準、メンテナンスの実務ポイント、中古重機の活用方法について解説します。

重機のリースと購入:どちらを選ぶべきか?


重機リースのメリット・デメリット

項目内容
リースのメリット・初期投資が抑えられ、資金負担が軽減される
・最新機種を定期的に使用できる
・メンテナンスはリース会社が対応
・短期利用に最適(特定案件向け)
リースのデメリット・長期利用では購入より割高になる可能性あり
・仕様変更やカスタマイズができない
・契約期間の縛りがある
リースが向いているケース・3ヶ月~1年程度の短期工事
・最新機能を搭載した重機を使用したい現場
・自社でメンテナンス体制を持たない企業



重機購入のメリット・デメリット

項目内容
購入のメリット・長期的にはコストを抑えやすい
・自由にカスタマイズ・仕様変更が可能
・資産として計上でき、固定資産としての管理が可能
購入のデメリット・初期投資が大きい
・メンテナンスや保険、保管スペースの負担が発生
・機種の陳腐化リスクがある(長期使用で性能が相対的に劣化)
購入が向いているケース・2年以上など長期間使用が見込まれる工事
・自社で保守・整備体制がある
・特定の重機を常時保有する必要がある



リースと購入の比較表

比較項目リース購入
初期コスト低い高い
メンテナンスリース会社が対応自社対応(外注含む)
使用期間短期向き(1年未満〜数年)長期向き(2年以上)
カスタマイズ原則不可(仕様固定)自由に変更可能
最新機種の導入常に最新を利用しやすい自社で買い替えが必要
契約の柔軟性契約期間に縛りあり自社都合で運用可能
会計処理経費として処理(オペレーティングリース等)固定資産として計上(減価償却)



リースと購入のコスト比較(油圧ショベル 5年使用)

項目リース(5年)購入(5年)
初期費用0円約2,000万円
月額費用50万円 × 60ヶ月なし
メンテナンス費0円(リース会社負担)約500万円
売却価値(資産価値)なし約600万円(リセール)
総コスト3,000万円約1,900万円


※使用頻度が高い場合は購入の方が割安。短期であればリースが有利。
※価格・料金は2025年1月現在の一般的な料金を参考にした概算、要確認。


重機メンテナンスのコツとポイント

メンテナンスの重要性

「重機の適切なメンテナンスは以下の効果があります」



重機メンテナンスの重要性と効果

効果内容
修理コストの削減故障の予兆を早期発見し、大規模修理を回避
事故や故障の予防機械トラブルによる労災・現場停止を未然に防止
機械寿命の延長適切な整備で耐用年数を引き上げ、投資効率向上
稼働停止リスクの回避工期遅延を防ぎ、施工の安定化に貢献



点検種別ごとのチェックポイント

点検区分実施頻度主な内容
日常点検毎日・エンジンオイル、冷却水、燃料の確認
・ブレーキ・油圧系統の異常チェック
・タイヤ/クローラーの摩耗状態確認
・異音・振動の有無確認
定期点検1〜3ヶ月ごと・エンジン・フィルターの清掃・交換
・油圧ホース/シリンダーの点検
・バッテリーの状態確認
年次点検年1回以上・シリンダー・ブームの分解点検
・エンジン/ミッションの総合診断
・機体全体のオーバーホール実施


デジタル管理の活用(IoT・クラウド)

  • IoTセンサー:重機の稼働時間・温度・振動をリアルタイム監視
  • ・クラウド管理:点検・修理履歴を本社と共有。担当者間の引き継ぎもスムーズ
  • ・遠隔対応:現場に出向かずに状態把握・点検指示が可能に



メンテナンス費用を抑える工夫(5つの実践)

施策内容
① オペレーターによる簡易メンテ日常点検・給油などは自社で対応し、外注コストを削減。
② 予防保全の徹底定期点検を徹底し、突発的な故障や工期遅延を未然に防ぐ。
③ 適切なタイミングで部品交換メーカー基準よりも現場実態に合った交換タイミングを設定し、無駄なコストを抑制。
④ アイドリングストップの励行無駄な燃料消費を防ぎ、燃料費+エンジンの摩耗を同時に抑える。
⑤ 低燃費モデルやバイオ燃料の導入ランニングコストと環境負荷を同時に削減。脱炭素経営にも貢献。


中古重機の活用と選定ポイント

中古重機を選ぶ際のチェックポイント

チェック項目内容
メーカー保証の有無購入後の故障リスクに備え、保証付きの車両を優先的に検討。中古でも保証対応があるか確認。
メンテナンス履歴の確認定期点検・整備記録が残っているか確認。
履歴が明確な機体は整備状況を把握しやすく、信頼性が高い
エンジン・油圧系統の状態異音・漏れ・動作不良がないか実機確認を実施。
エンジン始動性や油圧の動作音にも注意
稼働時間と年式の確認稼働時間は5,000時間以下がひとつの目安。
年式が新しいほど機体の状態や部品流通性にもメリット。


重機管理の最適化でコスト削減と効率アップを実現

リースと購入の選び方】

重機導入と運用における判断と実務ポイント

条件おすすめ選択
利用期間が短い(目安:3年未満)リース
利用期間が長い(目安:3年以上)購入
メンテナンスや管理を外部に任せたいリース(保守込み)
資産計上・減価償却による節税をしたい購入


【メンテナンスの最重要ポイント】

  • 日常点検の徹底でトラブルを未然に防止
  • IoTセンサーやクラウド管理による稼働・点検履歴の一元化
  • 簡易点検(オペレーター対応)+省エネ運転でメンテナンス費用の最適化


【中古重機の活用によるコスト削減】

耐用年数・将来的な修理リスクも考慮して導入可否を判断

高品質な中古重機を選定すれば、初期コストを大幅削減可能

・ポイントは「稼働時間5,000時間以下+メンテナンス履歴あり


 *建設業の現場運用では、「重機の調達」と「維持管理」がコスト構造を左右します。最適な選択と管理を行うことで、利益率の高い事業運営が可能になります。

建設業における重機購入・リースと節税の会計処理ガイド

重機購入時の消費税と仕入税額控除の仕組み


重機購入にかかる消費税の基本

項目内容
適用税率消費税率 10%(課税取引)
仮払消費税の計算購入価格 × 10% = 仮払消費税
(例:重機本体価格1,000万円 × 10% = 100万円)
消費税の精算方法(原則課税)月次・四半期・年次決算時に下記のように計算:
仮受消費税 − 仮払消費税 = 納付すべき消費税額



仕入税額控除とは?

 仕入税額控除とは、事業にかかる経費や仕入れに対して支払った消費税(仮払消費税)を、売上にかかる消費税(仮受消費税)から差し引いて納税額を減らせる制度です。
課税事業者が対象で、法人・個人問わず利用可能です。



控除を受けるための3つの要件

要件内容
① 課税事業者であること消費税の納税義務がある事業者である必要があります(免税事業者は不可)。
② 適格請求書(インボイス)の受領仕入先が「インボイス発行事業者」であることが必要です。
2023年10月以降のインボイス制度に対応。
③ 正しい会計処理の実施支払時に「仮払消費税」として仕訳し、帳簿とインボイスを保管する必要があります。
(仕訳例:車両運搬具/現金、仮払消費税/現金)


リース契約における消費税と会計処理の違い

リース形態会計処理消費税の扱い特徴
オペレーティングリース月額リース料を経費処理(費用計上)月額ごとに課税・仕入税額控除可・短期契約向き
・所有権はリース会社に残る
ファイナンスリース(所有権移転外リース)リース資産として固定資産計上+減価償却
未払リース料は負債計上
契約時に全額課税・仕入税額控除可・実質的に購入と同様の扱い
・長期契約で所有リスクあり



仕入税額控除の適用条件(共通)

条件内容
課税事業者であること消費税の納税義務があることが前提
適格請求書(インボイス)の受領発行事業者からの請求書が必要
正しい帳簿・仕訳処理仮払消費税を正確に計上・管理しておくこと


インボイス制度とリース契約の注意点

インボイス制度の概要とリース契約への影響

項目内容
制度開始2023年10月スタート(適格請求書等保存方式の導入)
基本要件仕入税額控除を受けるには、
「適格請求書(インボイス)」の保存が必須
リース契約への影響リース料も「課税仕入れ」の対象。
請求書にインボイス記載がない場合、消費税控除不可となる可能性あり。



リース会社のインボイス登録状況の確認

チェックポイント内容
登録番号の確認契約先(リース会社)が適格請求書発行事業者か事前確認が必要
登録未対応の場合の影響消費税相当分(10%)を仕入税額控除できず、
実質コストが増加するリスクあり
請求書の記載確認適格請求書には以下の項目が必要:
・登録番号
・税率別の消費税額
・発行者情報(名称・住所等)



既存契約・更新時の対応ポイント

タイミング対応内容
既存契約中長期契約中であっても、
2023年10月以降の請求からインボイスの確認が必要
契約更新時・契約書や請求書にインボイス記載があるか要チェック
・リース会社とインボイス対応状況を事前にすり合わせておく
見直しの必要性非対応業者との契約は、
解約・代替業者選定の検討も視野に入れる必要あり


重機購入時の会計処理と耐用年数の考え方

重機購入時の仕訳処理(仮払消費税含む)

・建設機械+仮払消費税の仕訳
・資産計上と未払金/現金処理


重機の法定耐用年数一覧(国税庁基準)

重機の種類法定耐用年数(年)
油圧ショベル(パワーショベル)7年
ブルドーザー7年
ホイールローダー7年
クレーン車(移動式)6年
ダンプトラック(大型)4年
コンクリートミキサー車5年
アスファルトフィニッシャー5年




減価償却の基本とは?

 減価償却とは、高額な資産(建設機械・車両・建物など)を購入した際に、費用を一度に処理せず、耐用年数に応じて分割して費用化する会計処理です。

  • 会計:資産の価値を段階的に費用として計上
  • 税務:課税所得の調整=節税効果につながる



減価償却の2つの代表的な方法

区分定額法定率法
償却方法毎年同じ金額で償却初年度に多く償却し、年々減額
特徴毎年一定額の費用で利益が安定初期に費用が多く出ることで節税効果が高い
向いているケース・長期で安定収益を見込む企業
・財務を平準化したい場合
・初年度に大きな利益が見込まれる
・早めに投資回収したい場合
節税効果緩やか(利益をならす)高い(初年度の利益圧縮に有利)



決算期の設備購入と即時償却の効果

項目内容ポイント
即時償却の活用決算前に対象設備を購入すれば、全額をその年の経費にできる制度(※条件あり)黒字を圧縮して法人税を軽減できる
少額減価償却資産の特例購入価格が30万円未満の資産は、年間300万円まで一括で経費計上OK(中小企業限定)複数台の備品や工具などに使える、手軽で効果的な節税策



購入とリースの税務比較

比較項目購入リース
会計処理固定資産として計上し、
減価償却で毎年費用化
月額リース料を
そのまま経費処理
消費税の処理購入時に仮払消費税を一括計上し、
仕入税額控除で還付・控除が可能
月額リース料にかかる消費税を
都度控除(インボイス対応要)
キャッシュフロー初期に多額の資金が必要だが、
節税効果が高い
初期費用が少なく、
毎月の支払いで資金繰りが安定しやすい
節税効果減価償却+即時償却・特別償却で
節税の幅が広い
経費処理はできるが、
節税効果は限定的
適しているケース資金に余裕があり、
節税や資産保有を重視したい場合
資金負担を抑えたい、
短期利用・入替えが前提の場合


特別償却・税額控除・即時償却の活用戦略

*特別償却、税額控除等の枠組み情報などは2025年1月現在のものです。
 ご検討いただく場合は税務署及び関係各所で都度ご確認をお願いします。


特別償却の仕組みと効果

項目内容
特別償却とは?対象設備を購入した際、初年度に通常より多くの金額を償却できる制度(税法上の優遇措置)
目的・効果初年度の経費が増えることで、利益が圧縮され、法人税を軽減できる
通常との違い通常:耐用年数に応じて均等に償却
特別償却:初年度に割増して償却OK(例:30%上乗せなど)
対象となる設備中小企業の機械装置や建設用機材など、要件を満たす「指定資産」が対象(制度により異なる)



税額控除との違いと適用条件

比較項目税額控除特別償却
仕組み設備投資額の一部を、法人税額から直接差し引く設備の取得費用を、初年度に多めに経費計上できる
節税の効果即効性が高い(支払う税金そのものが減る)所得が減ることで法人税が軽減される(間接的)
会計上の利益利益は減らず、税額だけが減る利益が下がる(利益調整・決算対策に有効)
併用可否制度によっては特別償却と選択適用(併用不可が多い)
適用条件中小企業経営強化税制・先端設備等導入計画など
事前申請・認定が必要なケースあり
対象資産指定された機械装置・建設機材など(制度により異なる)




即時償却で全額を初年度に経費計上

・設備全額をその年の経費とできる制度
・資金繰り改善に寄与(要件あり)

建設業の設備投資における会計と節税の最適解

会計・税務対応の全体戦略

項目内容
重機購入とリースの会計処理購入:固定資産に計上 → 減価償却で費用化
リース:
・オペレーティングリース → 月額経費処理
・ファイナンスリース → 資産計上+償却処理
消費税の処理仮払消費税はインボイス(適格請求書)保存で控除可能
減価償却の活用定額法/定率法の選択や、即時償却・特別償却の活用で節税可能



実務で見落としがちなポイント

注意点解説
インボイス対応の確認購入先・リース会社が「適格請求書発行事業者」かを確認。
非対応なら消費税控除ができず、実質コスト増に。
決算前の購入タイミング決算直前の設備投資は、即時償却や少額資産特例が使える場合あり。
→ 節税対策に有効。
減価償却方法の選択定率法(初年度に多く償却)で利益圧縮、
定額法(均等償却)で安定的な費用計上が可能。
→ 自社の利益計画に応じて選ぶことが重要。




まとめ

 建設業において、重機の導入・管理方法を戦略的に見直すことで、経費削減・節税・資産形成といった多面的な効果を得ることができます。

「現場で必要な性能と期間に応じた重機選定」+「インボイス制度・減価償却・税額控除などの制度を正しく活用する会計対応」を掛け合わせることが、企業の利益を守るためのカギです。経営資源を最大限に活かすためにも、財務・現場・管理部門が連携して、最適な設備投資と運用計画を立てることが求められます。

総括:利益を最大化するための“攻め”の設備戦略がポイント!!