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建設業のサブスクリプションモデルは可能か?

2025年7月9日
建設会社M&A

はじめに

NetflixやAmazonなどで定着した「サブスクリプション(定額制)」モデルが、今、建設業界でも注目され始めています。特に住宅メンテナンス、設備保守、外構管理といった「アフターサービス」領域での導入が広がりつつありますが、業界特有の課題も存在します。本記事では、建設業におけるサブスク型ビジネスの可能性と成功のカギ、そして導入にあたって押さえるべきポイントを実例とともに解説します。

1. サブスクリプションモデルとは?

サブスクリプション(subscription)とは、一定期間ごとに料金を支払うことで、継続的にサービスや製品を利用できるビジネスモデルです。

建設業での代表的なサブスク領域

分野サービス内容ターゲット
住宅メンテナンス定期点検・清掃・修理戸建住宅の施主
設備保守給湯器・エアコン・換気設備などの保守契約ビル・アパートのオーナー
外構・庭管理草刈り・剪定・清掃高齢者世帯・共働き家庭
法定点検消防・電気設備の定期検査商業施設・テナントビル

2. なぜ今、建設業でもサブスクが注目されるのか?

■ 単発受注型から「継続収益型」への転換

これまでの建設業は“1回売って終わり”の単発ビジネスが主流でした。
しかし、顧客の「一生のつながり」を築けるサブスクモデルは、収益の安定化とLTV(顧客生涯価値)の最大化につながります。

■ 人手不足・高齢化社会との親和性

高齢者や忙しい共働き世帯が増える中で、「定期的に見に来てくれる」「困ったときにすぐ対応してくれる」サービスへの需要が高まっています。

■ 競合との差別化・ファン化が可能

単に「工事をして終わり」ではなく、生活全体に寄り添う企業姿勢を打ち出すことで、信頼と継続取引が生まれやすくなります。

3. 成功事例:すでに始まっている建設業のサブスクモデル

● 住宅会社A社:「暮らし安心メンテ365」

月額1,980円で、年2回の住宅点検+小修理を無償対応。
さらに水回り・エアコンなどのトラブルにも電話一本で駆けつける仕組みを導入。
リフォーム・外構工事の追加受注率が導入前の約1.7倍に。

● 設備業者B社:「給湯器あんしんプラン」

法人向けに、給湯設備や換気扇などの定期点検・消耗品交換・緊急対応を月額制で提供。
突発修理の回数が減少し、業務の平準化にも成功。

● 外構メンテC社:「庭の定額管理サービス」

月額5,000円で、剪定・除草・清掃を年6回実施。
高齢者世帯からのリピート率が80%以上。
「体力的に庭仕事がつらくなった」といったニーズにフィット。

4. 導入にあたってのメリットと課題

■ サブスク導入のメリット

メリット解説
売上の安定化月額課金によってキャッシュフローが安定する
顧客との継続関係アフターフォローによる信頼関係の深化
業務平準化忙しさが一時期に集中せず、年間通じて仕事が発生
アップセルの機会創出リフォーム・追加工事の提案チャンスが増える



■ 導入時の課題と対策

課題対策案
サービス設計の難しさ限界コスト・対応可能エリア・人員配置を明確に
顧客の理解促進メリットを「安心・時短・将来の節約」として訴求
利益率の確保基本料金+オプション・有料対応の明確化
退会防止サービス価値の見える化・サポート品質の維持

5. 導入を成功させるための3つのポイント

①「困る前」に動くニーズを掘り起こす

住まいの悩みは“困ったとき”よりも、“困る前”のサインが重要。「定期チェック」「ちょっとした修理」を通じて、予防的な価値を提供しましょう。

② スモールスタートで展開する

いきなり全顧客に提供するのではなく、

・OB顧客限定

・自社近隣エリア限定

など、小さく始めて改善→拡大する流れが効果的です。

③ 担当者の“顔”が見える安心感をつくる

定額制は“定期的に会う”サービスでもあります。訪問する担当者の印象・対応力がサービス満足度を大きく左右します。

6. まとめ:建設業にも“サブスク思考”を

サブスクリプションは、ただの価格形態の工夫ではありません。「関係性を長く保つ」「顧客に寄り添い続ける」ことをビジネスにする思考の転換です。建設業界だからこそ、

・手間をかけて家を建てたその後
・工事をして終わりではないその先

上記二点にフォーカスすることで、安定した経営とファン顧客の育成につながる可能性があります。

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