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建設業のM&Aは「まだ先」と思っている今こそ準備が重要

2026年3月31日
建設会社M&A

将来の譲渡を見据えて、今からできることと押さえておきたいポイント

 近年、建設業界では後継者不足や人材確保の難しさ、経営者の高齢化などを背景に、M&Aによる事業承継が増加しています。

一方で、「今すぐ会社を譲渡する予定はないが、将来的には検討する可能性がある」という経営者の方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、建設業のM&Aは、売却を決めてから準備を始めるのでは遅いケースも少なくありません。

なぜなら、建設業は許認可や資格、人材体制など、事業を継続するための前提条件が多く、整理や改善に一定の時間を要する業種だからです。

そのため、「まだ先」と考えている時期こそが、最も重要な準備期間ともいえます。
本記事では、将来的に会社の譲渡や事業承継を検討している方に向けて、

  • ・準備期間中にやっておくと良いこと
  • ・いざという時に慌てないためのポイント
  • ・買い手から見られている実務的なチェック項目


について、分かりやすく解説します。

建設業のM&Aは「準備期間」で結果が大きく変わる

建設業のM&Aでは、会社の規模や売上だけでなく、
事業が継続できる状態にあるかどうかが非常に重視されます。

たとえば、

  • ・技術者が不足している
  • ・許可や資格の管理が不十分
  • ・経営者個人に仕事が依存している
  • ・決算書の内容が分かりにくい


といった状態では、買い手が見つかりにくくなったり、希望条件での譲渡が難しくなったりすることがあります。

逆に言えば、準備期間中に少しずつ体制を整えておくことで、

・譲渡価格が高くなる
・買い手の候補が増える
・交渉がスムーズに進む
・事業の継続性が高く評価される


といったメリットにつながります。

将来的な譲渡を見据えて確認しておきたい3つの基本視点

まずは、次の3つの視点から自社の状態を確認してみることが重要です。


①事業が「誰でも引き継げる状態」になっているか
建設業のM&Aでは、経営者が引退した後も、現場が問題なく動くかどうかが大きな評価ポイントになります。
特に重要なのは、次のような点です。

・現場管理を任せられる人材がいるか
・技術者や資格者が確保されているか
・工事の進め方が仕組み化されているか
・取引先との関係が会社単位で構築されているか

もし、仕事の受注や現場管理のほとんどを経営者自身が担っている場合は、少しずつ役割を分散していくことが望ましいといえます。


② 数字や経営状況を第三者に説明できるか
建設業のM&Aでは、利益額そのものよりも、数字の透明性や説明のしやすさが重視されます。
特に見られるのは、次のような項目です。

・売上や利益の推移
・工事ごとの収支管理
・借入金やリース契約の内容
・未成工事や未払金の状況
・役員報酬の水準

これらが整理されている会社は、買い手に安心感を与えることができ、交渉が円滑に進みやすくなります。


③ 人材体制が維持できる状態にあるか
建設業は、人材の存在そのものが会社の価値に直結します。
特に重要なのは、次のような人材です。

・専任技術者
・現場管理者
・有資格者
・若手人材

また、協力会社や外注先との関係も、事業の継続性を支える重要な要素です。こうした人材や関係性が安定している会社は、買い手から高く評価される傾向があります。

準備期間中に取り組んでおきたい5つの実務ポイント

ここからは、将来的な譲渡を見据えて、今からでも取り組める具体的なポイントを紹介します。

① 建設業許可や資格の管理を徹底する
建設業では、許可や資格が事業継続の前提条件になります。
そのため、これらの管理状況は必ず確認されます。
特に重要なのは、

・許可更新の期限管理
・経営事項審査(経審)の受審状況
・専任技術者の配置状況
・資格証明書の保管

といった点です。

これらが整理されている会社は、「引き継ぎやすい会社」として評価されやすくなります。


② 取引関係を「個人」ではなく「会社」にする
建設業では、経営者個人の人脈によって仕事が成り立っているケースが少なくありません。

しかし、M&Aの観点では、これはリスクと見られることがあります。

改善の方向性としては、

・契約書を整備する
・担当者を複数化する
・顧客情報を共有する
・業務手順を記録する

といった取り組みが有効です。

これにより、事業の継続性が高まり、譲渡時の評価向上にもつながります。


③ 決算書や帳簿を整理する
決算書は、会社の健康状態を示す最も重要な資料です。
特に整理しておきたいのは、


・私的な支出の分離
・不要な資産の処分
・未収金や未払金の管理
・在庫や資材の把握


といった点です。

これらが明確になっている会社は、
金融機関や買い手からの信頼を得やすくなります。


④ 技術者や後継候補を育成する

建設業のM&Aでは、人材の有無が結果を大きく左右します。
特に、

・若手社員の採用
・資格取得の支援
・現場管理経験の付与
・権限委譲

といった取り組みが重要です。

人材が育っている会社は、
将来性のある会社」として評価されやすくなります。

⑤ 借入や個人保証の状況を把握する
建設業のM&Aでは、借入や個人保証の扱いが重要な論点になります。
確認しておきたいのは、次の点です。

・借入金の残高
・個人保証の有無
・担保の内容
・金融機関との関係

特に、個人保証の解除が可能かどうかは、
譲渡の条件やスケジュールに大きな影響を与えることがあります。

いざという時に慌てないためのチェックリスト
将来的な譲渡を検討している場合、次の状態を目指しておくと安心です。

建設業M&Aの基本チェックリスト

・建設業許可が有効である
・専任技術者が在籍している
・3期分の決算書が整理されている
・主要取引先との関係が安定している
・借入や保証の状況が把握できている
・従業員が継続して働ける環境がある
・業務が仕組み化されている
・経営者に業務が集中していない


これらが整っていれば、いざ譲渡を検討することになった際にも、スムーズに準備を進めることができます。

まとめ

建設業のM&Aは「売る時」ではなく「準備している時期」に結果が決まる
建設業のM&Aは、突然必要になることも少なくありません。

たとえば、

・体調不良
・事故
・人材の離職
・受注の減少

といった出来事がきっかけで、急に事業承継を考えるケースもあります。

そのときに、

準備していた会社は、選択肢が増えます

準備していなかった会社は、選択肢が限られます

だからこそ、「まだ先」と考えている今こそが、最も重要な準備期間といえます。
将来のために、まずは小さな整理から始めてみることが、結果的に会社の価値を高めることにつながります。